フレームワークは、結論を自動で出す公式ではありません。意思決定に必要な論点を漏れなく、重複なく、短時間で整理するための道具です。
実務では「SWOTを作る」ことから始めず、誰が何を決めるのかを定義し、問いに合う型を選び、事実から示唆と打ち手へ変換します。本記事では12の代表的な型を、用途・組み合わせ・実務例とともに整理します。
フレームワークの使い方は選考でも問われます。コンサル転職の書類・ケース・ジョブ選考の進め方とあわせて確認してください。
目的別|12のフレームワーク早見表
分析したい対象ではなく、最終的に答えたい問いから選びます。複数の型を使う場合も、同じ情報を繰り返し整理しないことが重要です。
| フレームワーク | 答えたい問い | 主なアウトプット |
|---|---|---|
| PEST | 外部環境はどう変わるか | 機会・脅威と時間軸 |
| 5フォース | なぜこの業界は儲かる/儲からないか | 収益性を左右する構造 |
| 3C | 顧客・競合・自社のどこに勝ち筋があるか | 差別化の仮説 |
| SWOT | 内外の条件をどう戦略へつなぐか | 優先戦略と回避策 |
| STP | 誰に、どの価値で選ばれるか | 対象顧客と位置付け |
| 4P | 提供価値をどう市場へ届けるか | 商品・価格・流通・販促 |
| カスタマージャーニー | 顧客体験のどこに課題があるか | 接点別の課題と施策 |
| バリューチェーン | どの活動が価値・コストを生むか | 改善対象と優位性 |
| VRIO | 自社の強みは持続的か | 競争優位になる資源 |
| 7S | 戦略と組織は整合しているか | 組織変革の論点 |
| アンゾフ | どの市場・製品で成長するか | 成長方向とリスク |
| ロジックツリー | 問題をどこまで分解すべきか | 原因・論点・打ち手 |
フレームワークを使う前に意思決定の問いを決める
「市場分析をする」「SWOTを作る」では、分析の終了条件が曖昧です。最初に、意思決定者、判断する内容、対象範囲、期限、判断基準を一文で定義します。
問いの例:「当社は、3年以内に営業利益へ貢献できる成長領域として、国内医療SaaS市場へ参入すべきか」。この形まで具体化すると、PEST、5フォース、3Cなど必要な分析を選べます。
- 誰が、いつまでに、何を決めるのか
- 対象市場・顧客・製品・期間はどこまでか
- 判断基準は売上、利益、実現可能性、リスクのどれか
- 事実と仮説をどのデータで検証するか
問いを分解して検証順を決める方法は、コンサルの仮説思考とコンサルタントの論理的思考で詳しく解説しています。
外部環境と競争を分析する4つの型
PEST|変化を事業インパクトへ変換する
政治・経済・社会・技術の情報を並べるだけでなく、「いつ」「どの顧客・収益・コストへ」「どの程度」影響するかを整理します。変化の方向、確度、影響度、発生時期を併記すると優先順位を付けやすくなります。
5フォース|業界の収益構造を見る
競合企業の多さだけではなく、新規参入、代替手段、仕入先、顧客の交渉力を確認します。各要因が価格、数量、コストのどこへ影響するかまで落とすと、収益性の説明になります。
3C|勝ち筋の仮説を作る
Customer、Competitor、Companyを別々に説明せず、顧客が重視するが競合が満たせておらず、自社が再現可能に提供できる価値の重なりを探します。
SWOT|クロス分析で戦略へつなぐ
強み・弱み・機会・脅威を列挙した後、強み×機会、強み×脅威、弱み×機会、弱み×脅威を組み合わせます。打ち手の優先順位と、実施しない選択肢まで明確にします。
顧客と市場を設計する3つの型
| 型 | 実務で確認すること | 注意点 |
|---|---|---|
| STP | 市場を分け、狙う顧客と選ばれる理由を定義する | 分類しやすさより、購買行動の違いで分ける |
| 4P | 商品・価格・流通・販促の整合性を確認する | 4項目を個別最適にしない |
| カスタマージャーニー | 認知、比較、購入、利用、継続の障害を探す | 想像だけで作らず顧客データで更新する |
顧客の発言をそのまま課題にせず、事実、背景、意思決定条件を確認します。問題を深掘りする手順はコンサルタントの課題解決力を鍛える方法も参考にしてください。
自社の能力と成長を考える5つの型
| 型 | 分析対象 | 実務で得る結論 |
|---|---|---|
| バリューチェーン | 調達・製造・販売・サービスなどの活動 | 価値、コスト、差別化を生む工程 |
| VRIO | 人材、技術、顧客基盤、データ、ブランド | 優位性の強さと持続性 |
| 7S | 戦略、組織、制度、人材、能力、価値観、運営 | 変革を止める不整合 |
| アンゾフ | 既存/新規の市場と製品 | 成長方向と必要能力 |
| ロジックツリー | 問題、原因、施策、数値式 | 検証すべき論点と優先順位 |
ロジックツリーはMECEに分けること自体が目的ではありません。意思決定に必要な深さで止め、検証可能な仮説へ変えます。
実務で使うフレームワークの組み合わせ例
新規市場参入
PEST → 5フォース → 3C → SWOT
市場変化、収益構造、勝ち筋、自社条件の順に絞り込みます。
新商品・マーケティング
3C → STP → 4P → カスタマージャーニー
顧客理解から対象、提供方法、体験上の障害へつなぎます。
収益・業務改善
ロジックツリー → バリューチェーン → 3C
数値差を分解し、改善工程と顧客・競合への影響を確認します。
組織変革・DX
7S → VRIO → ロジックツリー
組織の不整合、必要能力、実行課題の順に整理します。
実務例|提案通過率が下がった原因を分析する
- 問い:提案通過率を6か月で改善するため、優先して変えるべき要因は何か
- ロジックツリー:案件の質、顧客理解、提案内容、価格、競合、営業プロセスへ分解する
- 3C:顧客の選定基準、競合提案、自社の強み・弱みを比較する
- カスタマージャーニー:初回接点から意思決定までの離脱点を確認する
- 結論:優先顧客、提案メッセージ、案件レビュー方法を変更し、KPIを設定する
分析結果を顧客の意思決定資料へ変える方法は、コンサル提案書の作り方で確認できます。
分析を示唆と打ち手へ変える5ステップ
- 意思決定の問いと判断基準を書く
- フレームワークの各項目へ事実・出典・時点を入れる
- 重要な差、変化、矛盾、例外を見つける
- 「だから何が言えるか」を一文で示す
- 打ち手、期待効果、リスク、検証方法、責任者へ落とす
良い示唆の条件:事実の要約ではなく、意思決定を変える内容になっていること。「市場が伸びている」ではなく、「既存顧客基盤を生かせるA領域へ、B条件を満たした場合に参入する」のように判断と条件を示します。
打ち手を実行計画へ変えるときは、コンサルのプロジェクト管理と実行支援コンサルの進め方へ進んでください。
生成AIをフレームワーク分析に使う方法
生成AIは、論点候補、情報の分類、反対仮説、抜け漏れの指摘、経営者・CFO・現場責任者の視点でのレビューに向いています。一方、入力した情報の正確性、顧客固有の事情、社内政治、意思決定者の価値観は自動では把握できません。
- 事実と仮説を別の列で出力させる
- 各主張へ根拠と追加確認事項を付ける
- 使用しなかったフレームワークと、その理由を説明させる
- 現在の結論へ反対する仮説を3つ作らせる
- 機密情報や個人情報を入力しない
フレームワーク利用の失敗と防ぎ方
| 失敗 | 起きる問題 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 型を使うことが目的になる | 分析量は増えるが判断できない | 最初に意思決定の問いを書く |
| 項目を埋めるだけ | 事実の羅列で示唆がない | 差・変化・矛盾から「だから何か」を出す |
| 事実と推測を混ぜる | 根拠の弱い結論になる | 出典、時点、確度を明示する |
| 複数の型を重ねすぎる | 同じ情報を何度も整理する | 各フレームワークの役割を一つに絞る |
| 一般論を優先する | 顧客固有の制約を見落とす | データ、ヒアリング、現場観察で更新する |
次に学ぶ記事|実務スキル別
コンサルタントとしての実力を体系的に伸ばす
基礎思考、調査、ヒアリング、提案、プロジェクト運営、AI活用まで、実務に必要なスキルを学習順に確認できます。
コンサルタント養成ガイドを見る →この記事の執筆・編集
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参考資料・情報源
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